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- Industrial IoTが求めるシカケの裏側
測定環境での事前の帯域測定とペイロードデザインが重要【第5回】
ファストデータの遠隔収集の課題解決(その3)
広域を高速移動しながらの帯域は大きく変動するうえ、山間部など電波条件が悪いエリアでは、データ通信ができなくなる箇所も発生する。最高に状態の良いエリアで約20Mbps(ビット/秒)、悪いエリアでは、ほぼデータ通信が成立していない。地図上で赤くなっている箇所は帯域が2Mbps以下に低下した地点だ。全経路での平均帯域は約5Mbpsを確保できていた。
5Mbpsの平均帯域であれば、データ量によってはリアルタイムストリームが中断してしまう地域が発生する可能性はあるが、前回紹介したCANデータ収集のいかなるユースケースの場合(最大2.4Mbps)でも成立する。さらには動画データなどを併せて送信することも可能だ。
動画データは、いかなるデータ収集においても、その時に“どんな状況で”“どのような挙動で”といった事象を把握する上では、データを裏付ける大きなファクタになる。制御/センサデータと動画・音声などのメディアデータを同時に収集できることは、データ収集における最強の組み合わせだといえる。
参考までに、動画データをストリーム伝送する際の必要帯域の参考値を表1に紹介する。
圧縮方式 | 画質 | フレームレート | 必要帯域 |
H.264 | 720p | 30 | 約3Mbps |
H.264 | 1080p | 30 | 約5Mbps |
MotionJPEG | QVGA | 15 | 約1.2Mbps |
MotionJPEG | VGA | 15 | 約5Mbps |
5Mbpsの平均帯域があれば、前回紹介した「秒間6000個のCANデータをMQTTでリアルタイム伝送し、同時にHTTPで欠損回収する2.4Mbpsを平均帯域で必要とするシナリオ」におけるユースケース2の場合の選択肢1)に加え、秒間15フレームのQVGAデータもMotion JPEG形式であれば十分伝送できる。
海外の通信環境は日本とは事情が異なる
筆者が北米の都市部で帯域計測したサンプルも紹介する。図2は、カルフォルニア州の郊外からハイウェイでの計測結果で、最大上り実測帯域は47.7Mbps、最低上り実測帯域は0.08Mbps、平均実測帯域は7.7Mbpsだった。
図3は、オレゴン州ポートランドのダウンタウンでの計測結果だ。最大上り実測帯域は20.25Mbps、最低上り実測帯域は1.25Mbps、平均実測帯域は10.5Mbpsである。
両地域とも、都市近郊では広域で高速なLTE通信が確保できる。自動車関連の計測であればCANデータをはじめ、動画などのデータを一定のリアルタイム性と共に移動体から回収できる。
このように都市部に近いエリアでは高速なLTE通信を確保できる可能性が高く、充実した遠隔データ回収が可能になる。しかし、広域において確保できる通信方式が2G/3Gがメインのケースもある。そうした場合、最低限の目的に対してプライオリティを定めたデータ収集を定義しなければならない。