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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

e-PORT構想で実現したICT基盤上で地域課題を解決【北九州市IoT推進ラボ】

谷口 智美、小嶋 洋一( 北九州産業学術推進機構)
2018年12月21日

ネコ用IoTトイレ「トレッタ」を北九州発で商品化

 たとえば、新ビジネスの創出に向けては、事業相談を常時受け付けているほか、ビジネスの“種”の発見につながるワークショップやビジネスプランコンテストの開催などを通じて新ビジネス創出の“土壌”を作っている。そのうえで、ビジネスマッチングなどにより、より具体的なプランへ落とし込むためのコーディネートを実施している。

 これらの仕組みにより形成されたプロジェクトに対しては、「北九州e-PORT構想2.0新ビジネス創出支援補助金」の交付などにより、ビジネスモデルの検証や事業化に向けた挑戦を支援している。

 2017年度の成果の1つに、ねこの病気を予防・早期発見するためのネコ用IoTトイレ「トレッタ」がある(図2)。ベンチャー企業のハチたまがビジネスプランコンテストで提案し、グランプリを受賞した仕組みだ。きょう体は北九州工業高等専門学校と共同で試作し、2018年8月8日から販売している。

図2:「トレッタ」の概観と仕組み

 トレッタは、ネコがかかりやすい慢性腎不全を含む泌尿器系疾患の初期症状の早期発見を目的としたヘルスケアサービスだ。ネコがトイレを使用した際に、体重と尿頻度を自動で測定し、記録はスマートフォン用アプリケーションから確認できる。複数のネコを飼っていても、AIによる画像認識によりネコを特定できるようにもした。

データセンターのUPSの劣化監視サービスも実検証へ

 2017年度の北九州e-PORT構想2.0新ビジネス創出支援補助金では、7件の事業を採択した。その1つが、データセンターのUPS(無停電電源装置)バッテリーの劣化を監視する「らくでんち」がある(図3)。多くのデータセンターにおいて今も人手で実施されているUPS用バッテリーの点検作業の効率を高める。

図3:「らくでんち」の事業概要

 その開発においては、課題を持ち込んだデータセンター事業者と、地域のIT事業者であるミシマ・オーエー・システムがコンソーシアムを結成。IoTを応用したバッテリー点検システムを開発し、さらには開発したシステムの市場展開を目指している。

 これまでに、PoC(概念実証)に向けた現地調査を実施し、導入効果を測定したほか、バッテリー点検システムを設計し有効性を検証している。今後は、テスト機を使ったPoCを実施したうえで製品化を目指す。2018年度は開発の第2ステップとして、バッテリー監視システムの製品版を開発し、データセンター事業者が持つ本番環境への実装を予定する。

 ほかにも事業化を目指した複数のプロジェクトが立ち上がっている。2018年8月の公募にも多数の応募があった。今後も新サービス創出に向けて取り組み、これらの中から新しいビジネスが生まれてくるものと期待している。