- Column
- 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト
e-PORT構想で実現したICT基盤上で地域課題を解決【北九州市IoT推進ラボ】
地方版IoT推進ラボに2016年に第一弾として選ばれた北九州市IoT推進ラボ。同ラボが目指すのは、2015年に策定・公表した「北九州e-PORT構想2.0」の実現である。2002年に策定された「北九州e-PORT構想」で取り組んできたデータセンターなどのITインフラを活用し、地域課題の解決を目指す。北九州市IoT推進ラボの取り組みを紹介する。
九州の玄関口である北九州市は、1963年に5市合併により誕生した政令指定都市であり、古くから産業のまちとして成長してきた(写真1)。同時に、環境問題にも、昨今のSDGs(持続的な開発目標)を先取りする形で早くから取り組み、国内外から高く評価されている。
具体的には、2017年12月に第1回「ジャパンSDGsアワード」の特別賞を受賞。2018年4月にはOECDから「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に、同年6月には「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に、それぞれ選定されている。
観光都市としても、「見るもの、遊ぶもの、食べるもの」が充実している。2015年には官営八幡製鐵所関連施設が「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として世界文化遺産に登録された。2016年には「戸畑祇園大山笠行事」を含む「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に登録されている。
2002年からのe-PORT構想によりICT基盤は西日本最大規模に
そんな北九州市で、2016年に始動した北九州市IoT推進ラボは、北九州地域において個人や企業が抱える課題をICT(情報通信技術)を活用しながら、ビジネス視点で解決するための仕組みづくりに取り組んでいる。目指すのは、2015年に策定・公表した「北九州e-PORT構想2.0(e-PORT2.0)」である。
e-PORT2.0の前身として、2002年に策定された「北九州e-PORT構想」がある。地域に“情報の港(e-PORT)”を整備し、ICTサービスを電気や水のように、いつでも簡単・便利に使える社会づくりを目指すコンセプトだ。
e-PORTによる12年間の成果として、北九州市内にはデータセンターやコールセンター、情報倉庫などICTサービスの基盤となる拠点が形成され、西日本最大規模の情報関連施設の集積拠点に成長した。
一方で、中小企業やベンチャー企業等のICT基盤の利活用が進んでいないという課題が出てきた。加えて、人口減少問題や地方創生に向けた取り組みの進展など、社会環境の変化や、ICT技術の進化・多様化も進んでいる。こうした状況を踏まえ策定されたのが、e-PORT2.0である。
e-PORT2.0は、(1)地域課題をビジネス創出により解決を目指す「事業体」、(2)産学官民金のネットワーク「e-PORTパートナー」、(3)それら全体を運営する「e-PORT推進機構」から構成される(図1)。
ビジネス化を目指す事業体に対し、e-PORT推進機構が、ビジネスアイデアをブラッシュアップしたり、e-PORTパートナーを主軸とするビジネスマッチングを図ったりすることで、事業共同体である「e-PORTコンソーシアム」の形成や、各種実証実験の支援に取り組んでいる。
2018年4月には、e-PORT推進機構の事務局である九州ヒューマンメディア創造センターが、北九州産業学術推進機構(FAIS)と統合。それまでFAISが担当してきた北九州学術研究都市の運営や、ものづくり系企業への支援などのノウハウも、事業体支援の枠組みに追加されている。
これにより、従来のICT活用に加え、ものづくりの風土や、ロボット/AIなどの革新的技術を取り入れ、新ビジネスの創出や、地域産業の高度化、情報産業の発展に向けて活動している。