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“イノベーション立県”に向け広島県をまるごと実証実験の場に【広島県IoT推進ラボ】

尾上 正幸(広島県商工労働局イノベーション推進チーム)
2019年1月25日

実証実験を通じ中長期的なノウハウ蓄積と人材育成を目指す

 同プロジェクトでは、プラットフォームの整備やビッグデータの集積、AI分析システムの構築などを進め、県内外の企業や大学など、さまざまなプレーヤーの共創(オープンイノベーション)により、新たな産業やソリューションが創出できる環境を整備する(図1)。2018年4月からの3年間に10億円を投入する。

図1:「ひろしまサンドボックス」における“共創”のイメージ

 AI/IoTなどの活用に向けては、試行錯誤するための実証実験が欠かせない。その過程において、システムインテグレーターから現場のエンジニアまで、第4次産業革命に対応するのに必要な人材像や人材育成ニーズを整理し、地元企業に向けた人材の育成と集積を中長期的に進めたい考えだ。

 そこでは、ものづくり産業だけでなく、農業など他産業へのデジタル技術の適用を支援することで、県内外、さらには国内外からの人材や企業を呼び寄せ、AI/IoTの知見やノウハウを集積。そのことが新たな人材や産業を呼び込むといった好循環が生まれることを目標にする。

 なぜサンドボックスなのか。理由の1つは、イノベーションに取り組む企業がROI(投資対効果)を確認したり、投資リスクを抑えたりを可能にすること。そのための環境を県が整備することで、実証実験の実施を容易にする。

 もう1つは、広島県にAI/IoTなどに関する知見とノウハウの蓄積だ。他県では実施が難しい実証実験を、ひろしまサンドボックスでは可能にすることで、実証実験に多くの企業が参加できるようにし、広島発の新たなソリューションの創出を期待する。

会員がコンソーシアムを組んで実証実験にチャレンジ

 ひろしまサンドボックスは会員制を採っている。2018年5月に立ち上げた「ひろしまサンドボックス推進協議会」(事務局は広島県商工労働局イノベーション推進チーム)に参加する。2018年11月5日時点の会員数は592人で、うち189人が広島県外からの参加だ。

 会員の役割には、(1)プレーヤー=実証実験などにチャレンジしたい人たち、(2)アドバイザー=実証実験を自社の技術などで支援したい人たち、(3)インベスター=資金支援や商用化支援をしたい人たち、(4)プラットフォーマー=通信事業者など、ITインフラを持っている人たち、などがある。参加時に、それぞれの立場を表明する(図2)。

図2:ひろしまサンドボックスの体制

 協議会は、これら会員を母体に、AI/IoTをテーマとした実証実験にチャレンジするコンソーシアムを組成したり、プロジェクトを創出したり、あるいは、プロジェクトのブラッシュアップやプロジェクト間での情報交換、ナレッジコミュニティの形成などに取り組む。

 コンソーシアムは公募されるが、協議会の会員間で、同じテーマの実証実験にチャレンジしたい会員を探したり、結成したコンソーシアムに足りないメンバーを追加で探したり、といった活動も可能だ。

 2018年6月に実施したコンソーシアムの第1次公募には、38件(参加者数は合計197事業者)と、当初予定を上回る応募があった。2018年9月に実施した第2次公募には、第1次公募をさらに上回る51件(参加者数は合計334事業者)の応募があった。1次、2次を合わせた応募の4分の1は県外の事業者である。そのなかから「優秀提案者」に選ばれた9つのコンソーシアムと委託契約を結び、同年から実証実験をスタートしている。