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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

“イノベーション立県”に向け広島県をまるごと実証実験の場に【広島県IoT推進ラボ】

尾上 正幸(広島県商工労働局イノベーション推進チーム)
2019年1月25日

 実証実験の一例が、冒頭で紹介した国内生産量日本一のレモンの栽培に関する情報のデジタル化だ。広島ならではの傾斜地におけるレモン栽培を対象に、環境データや各種ノウハウなどをセンシング技術などを使って収集。非効率な労働環境における作業をロボットで支援するなど、生産性向上を目指す。

 広島産レモンは、首都圏での認知度が高いなど、一定のブランド化に成功している。ただ、生産現場では従事者の高齢化が“重い”課題になっている。地域によっては平均年齢が80歳を超えるにもかかわらず、若手の就農が進んでいない。加えて傾斜地での農業は農作業者への負担も大きく、農業を止める高齢者も増えている。

 こうした課題をセンシング+ロボットで解消すると同時に、そこでのテクノロジーを災害対策や地域住民の見守り、人手不足解消などにも応用することで、地域の活性化につなげたい考えだ。

横のつながりをうながす「データ連携基盤」の構築も検討

 広島県IoT推進ラボの取り組みは、ひろしまサンドボックスを1つの契機に、これまで交わることがなかった、新たなつながりを生み始めている。業界や産官学の枠を超えてつながったコンソーシアムが実証実験にチャレンジし、さらにそれらコンソーシアムが横に連携し始めているという(写真2)。県外からの関心も高まっている。

写真2:大勢の関係者が参加した交流会(2018年8月28日開催)

 こうしたつながりは、IoTの基本的な考えである「あらゆる境界をなくし、つながっていく」と同質なだけに、AI/IoTの普及に向けた大きな鍵になるとみられている。それだけに今後は、実証実験と並行し、さまざまなデータを連携し、その2次利用を可能にする「データ連携基盤(仮称)」の構築も検討する。

 ひろしまサンドボックスの実証事業については、2019年1月15日には広島市内でオフライン・ミーティングを開催するなど,2019年も継続する予定である。第3次の公募も2019年度内の実施を検討する。広島県を“まるごと”実証フィールドにする、ひろしまサンドボックスからの多くの成果が期待される。

尾上 正幸(おがみ・まさゆき)

広島県商工労働局イノベーション推進チーム