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“イノベーション立県”に向け広島県をまるごと実証実験の場に【広島県IoT推進ラボ】

尾上 正幸(広島県商工労働局イノベーション推進チーム)
2019年1月25日

観光資源なども豊富ながら、ものづくりから、農業・水産業なども活発な広島県は今、「イノベーション立県」を目指している。その実現に向け、AI(人工知能)やIoT(Internet of Thing:モノのインターネット)といった最新技術の利用と、それらを活用できる人材の育成を急ぐ。そのために広島県全体を実証実験の場に開放し、県内外から多様な人材やノウハウの集積を図る。

 嚴島神社と原爆ドームという2つの世界遺産や、豊かな瀬戸内海で育った牡蠣などで知られる広島県。マツダなどを核にした、ものづくり産業も集積する。そうした中に、国内生産量の7割強を占める生産品がある。瀬戸内海の温暖な気候を生かして栽培しているレモンだ。国産レモン約1万トンのうち7割強が広島県で生産されている。レモンを使った商品開発も進み、全国的に知名度の高い菓子やケーキなども販売されている。

写真1:広島県でのレモンの生産量は国産レモンの7割強を占める

イノベーションが次々と起こるエコシステムを作る

 そんな広島県が目指しているのが「イノベーション立県」の実現だ。基幹産業である、ものづくりの技術集積を生かしつつ、新しい産業が生まれ、社会や市場の変化に、柔軟かつ的確に対応できる状態を目標にする。そのために重要視しているのが、イノベーションが次々と起こってくる「イノベーション・エコシステム」の構築である。

 広島県は、第4次産業革命を経済の持続的発展のための“好機”と考えている。AI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)といったデジタル技術を使うことで産業の効率性を高め、イノベーションによる付加価値の創出を図りたい。だが、県内の製造業において、AI/IoTの導入に取り組んでいるのは1割程度にとどまるのが実状だ。同分野の人材不足も課題だ。こうした課題を解消するために2017年2月、活動を開始したのが広島県IoT推進ラボである。

 これまでに、2017年3月に「イノベーション・ハブ ひろしまCamps」を、2017年10月には「ひろしまデジタルイノベーションセンター」を開設している。ひろしまCampsは、創業あるいは第2創業の支援や、県内外の多様な人材が組織の枠組みを超えてネットワークを形成するための“場”の位置付けである。

 一方のデジタルイノベーションセンターは、ものづくり産業が第4次産業革命の流れに追従できるように、スーパーコンピューターなどの最新技術の活用をうながす“場”である。製品開発におけるシミュレーション解析が可能なほか、デジタル技術を活用できる人材育成にも取り組んでいる。

 これらの“場”の整備に続き、具体的な商品/サービスを創出するためのオープンな“実証実験の場”として実施するのが「ひろしまサンドボックス」プロジェクトだ。

「ひろしまサンドボックス」のロゴ