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福岡県発のテクノロジーで「IoT社会」実現へ【福岡県IoT推進ラボ】

小野 昌志(福岡県商工部新産業振興課IoT推進班)
2019年2月22日

県内中小企業の技術で推進するIoTプロジェクト

 こうした推進体制により、2016年度から数々の「先進IoTプロジェクト」を実施してきた。

2016年度実施プロジェクト

(1)飲酒運転防止システム:ドライバーの呼気や体温・心拍数などを各種センサーで検知することで飲酒運転を防止する。mrubyで開発しており、2018年12月に発売する予定である。

(2)介護予防・機能訓練向けゲームシステム:「立つ/座る」の動きをセンサーやカメラで分析し、ゲームを楽しみながらリハビリに有効な「起立運動」が行える。mrubyで開発しており、「起立の森」という商品名で2017年7月に発売した。

(3)茶圃場でのIoT運用支援システム:茶畑に設置された大型ファンの故障などを検知するシステム。全国的に茶の産地として知られる八女市の茶畑において、霜により茶葉が凍る冷害を防ぐのが目的だ。

2017年度実施プロジェクト

(1)あまおう等農作物栽培支援システム:福岡県が誇るブランドいちご「あまおう」の環境情報や生育データを取得し、AI解析により高品質・高収量な生産や農作業の省力化を目指す(写真2)。

写真3: いちごの生育データをセンサーで取得するシステム

(2)乾ノリ生産支援システム:全国的に有名なブランド海苔「福岡有明のり」の加工における最適な温湿度を解明し、より高品質な海苔の生産を目指す。

(3)太陽光施設監視システム:太陽光発電施設の発電状況やパネル/ケーブルの不良を遠隔監視する。将来的にはAIによる故障予知を目指す。

2018年度実施プロジェクト

(1)ため池管理システム:ため池の水位や状況をセンサーおよびカメラ映像で取得し、スマホなどでリアルタイムに遠隔監視する。災害の未然防止と農業用水の安定供給を図る。

(2)業務用電気製品の3Rシステム:商業施設などで利用されている業務用冷蔵庫などにセンサーを設置し、稼働状況を24時間監視する。AIにより、異常値からの故障個所の予測を目指す。

(3)高齢者や子どもの24時間見守りシステム:高齢者や子どもなどの特性にあったデバイスの開発と、効果的な24時間見守りを目指す。

(4)八女伝統本玉露生産支援システム:高品質な玉露の生産技術伝承を支援する仕組み。茶園の環境情報や茶芽の生育データを収集し、茶葉の品質との相関関係をAIで解析する。

IoTのボトルネックを解消する「次世代IoTプラットフォーム」を福岡から

 これら多数のプロジェクトを実施してきたことで、IoTを普及させるために不可欠な要件も見えてきた。具体的には、(1)電源が確保できない環境でも対応できる技術、(2)端末コストの低価格化、(3)専門知識がなくてもシステムを構築できる環境などである。

 これらボトルネックの解消を目指し、「次世代IoTプラットフォーム」の開発にも経産省の支援を受けながら取り組んでいる(図1)。安価な長距離通信を実現するとともに、専門知識なしにシステムを簡単に構築するためmrubyを活用したフレームワークを構築することで、IoT通信における世界標準を目指している。開発期間を短縮し、予定より1年前倒の2019年春には製品化される予定だ。

図1:次世代IoTプラットフォームのスキーム

 安価な長距離通信は、超低消費電力の次世代通信規格の1つ「BLE(Bluetooth Low Energy)5.0」に対応したセンサー端末と、「LoRaWAN」など低消費電力・長距離通信のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークを組み合わせて実現を図る。2017年度の経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポーティングインダストリー、略称サポイン)に採択され、当初予定を1年前倒しし2018年度中には製品化する予定である。