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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

慶応大学との産官学連携で地域を網羅するIoTプラットフォームを構築【湘南IoT推進ラボ】

中澤 仁、米澤 拓郎(慶應義塾大学)、福田 達夫(藤沢市IT推進課)
2019年4月5日

人・モノ・情報のIoT化で都市の可視化が進む

 情報流通プラットフォームを用いて実施しているプロジェクトのいくつかを紹介する。

「藤沢みなレポ」プロジェクト

 2016年11月にスタートした「藤沢みなレポ」は、人のIoT化の一例である。ゴミの不法投棄や落書きなどを、ゴミ収集を中心とした業務中に発見しようという取り組みだ(図2)。

図2:藤沢みなレポで収集されたデータの例

 職員が携帯するスマート端末を使って、業務中に発見した不法投棄や落書きなどを「不具合レポート」として送信することで、不法投棄などに関する情報を収集・共有する。同種の情報はこれまでは、電話とFAXで連絡したり、役場に戻ってから連絡したりしていたため、作業の迅速化や集めた情報のデータ化が求められていた。

 藤沢みなレポでは、これまでの2年間に5000を超えるレポートが集まり、1日約2時間の業務効率化に寄与している。集められたデータの分析からは、市内における不法投棄などの傾向などが把握できるようにもなった。

「Cruisers」プロジェクト

 2015年に始まった「Cruisers」プロジェクトは、公用車のIoT化により、市内の環境状況を把握する取り組みだ。市内を走る66台の清掃車に環境情報センサーを搭載し、地域の環境情報を網羅的に収集している(図3)。

図3: PM2.5の2018年3月21日(左)と23日のデータ比較。21日は雨、23日は快晴だった

 従来、花粉やPM2.5など粉塵の濃度は「地域でほぼ一様」が定説だった。だがCruisersにより、場所によって異なることが分かっている。花粉症や喘息で困っている市民や観光客などはCruisersの情報を使って原因物質を避けられる。

「Lokemon!」プロジェクト

 情報のIoT化によって市民が持つ情報を集めるプロジェクトである。一般に市民が持つ情報を集める際には、情報提供者のプライバシー情報をどう保護するか、情報提供へどう動機づけるかがが課題になる。Lokemon!では、これらを「キャラクターの収集する」というゲームと結び付けることで解消を図っている。

 具体的には、仮想的なキャラクターである「ロケーションモンスター」を市内のさまざまなスポットに設置。情報提供者は、そのスポットに近づくと設置されたモンスターとして情報を提供できる(図4)。「モンスターを集める」「モンスターになりきる」という“楽しさ”で動機づけし、モンスターとして投稿することで匿名化を図りプライバシーを保護している。

図4:「Lokemon!」アプリケーションの画面例(左)と実証実験の様子(中)、得られた写真投稿の例

 2017年、藤沢市民まつり、ちょい呑みフェスティバルを中心に、住民や観光客から市内の情報集める実証実験を実施した。結果、TwitterなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に投稿された情報をイベント名での検索した数より多くの情報が投稿された。市民から都市の情報提供を受ける新たなチャネルとして可能性が見いだせた。