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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

慶応大学との産官学連携で地域を網羅するIoTプラットフォームを構築【湘南IoT推進ラボ】

中澤 仁、米澤 拓郎(慶應義塾大学)、福田 達夫(藤沢市IT推進課)
2019年4月5日

神奈川県の藤沢市と茅ヶ崎市、寒川町の2市1町を中心とした湘南地域は、多様性に富んでいる。農業、漁業、工業といった産業に加え、慶応大学の湘南藤沢キャンパスや工場跡地を使ったスマートシティのプロジェクトも走る。そうした中、産官学で市民生活の向上を目指す湘南IoT推進ラボの取り組みを紹介する。

 湘南地域の中心に位置する神奈川県藤沢市と茅ヶ崎市、寒川町の2市1町は、多様性に富んだ地域である。漁業や農業、工業という多彩な産業と、新旧を取り混ぜた地域コミュニティ、そして湘南海岸や寒川神社、遊行寺といった観光資源を持っている。

写真1:「湘南の宝石 ~江の島を彩る光と色の祭典」は「関東三大イルミネーション」「日本夜景遺産」に認定されている湘南の冬の風物詩

 そんな湘南地域で、行政と民間企業、大学が力を合わせて新しいことに取り組んでいくために2017年に発足したのが、湘南IoT推進ラボだ。そこに住む人々や、観光や仕事で訪れる人々を情報が持つ力、すなわち「情報力」で、より幸せにするのが目的だ。2013年4月にスタートした「スマート藤沢プロジェクト」において、現在のIoT(モノのインターネット)関連の取り組みを主導している。

低コストと持続可能性を実現する情報流通プラットフォーム

 スマート藤沢プロジェクトは、行政の運営コストを削減しながらも、潜在的な課題を抽出し、市民生活の向上を図ろうとする取り組みだ。課題を抽出し、それを克服するためには、現場のニーズの発掘と、最先端技術としてのシーズの研究・開発が密接に連携する必要がある。

 そのため藤沢市では、大学、企業とも密に連携し、行政各課が継続してヒアリングしながら、課題を解決するためのシステムをプロトタイピングと、その改善を繰り返すアジャイル開発に、都市レベルで取り組んでいる。

 特に、都市の課題を解決においては、都市情報を稠密にセンシングする必要がある。そのため、低コストで持続可能な都市センシング手法を開発し、人(自治体職員と市民)、モノ(公用車)、情報(Web上の仮想センサー)を「IoT化」するというアプローチを考案した。

 自治体職員や住民のIoT化とは、スマートフォン用の専用アプリケーションを用意し、彼らが地域で発見したことレポートしてもらう仕組み。公用車のIoT化とは、クルマにセンサーを搭載し、1秒当たり100回センシングする仕組みである。公用車は地域をくまなく走行している。

 これらのIoT化で得られるデータを一元的に管理するために、慶應義塾大学が進める最先端の研究成果を用いて、地域を網羅する情報流通プラットフォーム「SOXFire」を構築、これを日常的に運用している。

 IoT化で都市から得られるデータはさまざまだ。だが、データごとに異なるプラットフォームを構築・運用していては、データの統合や融合分析に膨大なコストがかかってしまう。共通に利用できる情報流通プラットフォームを持つことで、各種プロジェクトで構築するサービスの開発・運用コストが削減できる。同時に、セキュリティやプライバシーを考慮した情報へのアクセス手段も実現できている(図 1)。

図1:情報流通プラットフォーム「「SOXFire」」