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  • 地方版IoT推進ラボが取り組む課題解決プロジェクト

リアル空間とグループウェアで地域のナレッジをシェアし地域マッチングで新事業創出へ【八尾ローカルナレッジシェア推進ラボ】

津田哲史、松尾泰貴(八尾市 経済環境部 産業政策課)
2019年5月10日

クラウドサービスの利用が人材投資や実ビジネスにつながり出した

 コンソーシアムへの参画企業は発足時の2018年5月8日時点では35社だった。それが、拠点開設時の18年8月8日時点では72社、2019年3月末時点には103社へと着実に増えている。多くは八尾市のオンリーワン企業/ナンバーワン企業のほか、アイデアをカタチに変える、ものづくりができる会社であり、未来志向が強い。

 とはいえ、プロジェクトのスタート時には「クラウドって何?」「FAXしてよ、携帯とか見ないから」「電話で言ってくれ」といった企業が散見された。Kintoneを、どう活用してもらうかが最初の関門にもなった。

 そのため、小規模な勉強会を何度も開催したほか、種々のイベントを企画し、その参加にはkintoneを必ず使わなければならないようにした。ポータル画面を工夫し使い勝手を高めるなど、さまざまな対策も講じた。

 これらの取り組みが奏功し、まず人材への投資が生まれている。広報特化会社やIoTシステムを持つ会社などの取り組みを見て、広報人材やIT人材を採用氏という動きが波及している。

 kintoneでの出会いによるビジネスも誕生した。襖製造会社からインテリア商材メーカーへの仕事の発注、石鹸メーカーと家具メーカーがコラボし新商品を開発するなどである。こうした取り組みが注目され、2018年はサイボウズの年次イベント「サイボウズデイズ」に、みせるばやおの副代表理事が登壇し、本プロジェクトの取り組みを紹介する機会も得た(写真4)。

写真4:サイボウズデイズで講演する、みせるばやお副代表理事の太田 泰造 氏(錦城護謨代表取締役社長)

機械・倉庫のシェアリングやIT人材の育成も

 今後は、(1)シェアリングの加速化と(2)ITリテラシーの向上を目指す。シェアリングの加速化では特に、機械・倉庫のシェアの可能性を模索する。たとえば、企業の活動における繁忙期と閑散期に着目し、空いている機械やオペレーター、倉庫の空きスペースなどを利用可能な期間だけシェアリングするなどだ。隣接地域だからこそ可能なシェアリングエコノミーを検討したい。

 ITリテラシーの向上に向けては、IT人材の育成に取り組む。すでに「みせるばやおIT道場」を立ち上げた。「組織が決めた制度に基づき強制的に働く環境を変える働き方改革」ではなく「働く人改革」と意味づけし、現場のニーズや、そこで働く人たちの困りごとを解決するためにITを活用する実践型の講座である。

 講座では、まずは自社での業務のムダや2重作業を見つめなおし、参加者同士で話し合う。その中で、外側からの目と内側からの目で業務のムダを洗い出し、相互にIT活用による業務の効率化を提案し、それを習慣づけていく。

 こうした取り組みにより、経営者だけでなく、そこで働く人へもアプローチすることで、みせるばやおの参画企業同士がITリテラシーを高め合い、企業が企業を育てるエコシステムの確立を目指す。そのための参画企業の拡充を図り、八尾市発のイノベーションを促進していく。

津田哲史(つだ・さとし)、松尾泰貴(まつお・やすき)

八尾市 経済環境部 産業政策課