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リアル空間とグループウェアで地域のナレッジをシェアし地域マッチングで新事業創出へ【八尾ローカルナレッジシェア推進ラボ】

津田哲史、松尾泰貴(八尾市 経済環境部 産業政策課)
2019年5月10日

河内音頭のふるさとである八尾市は、ものづくりの街でもある。伝統的な歯ブラシの生産から、電子機器などの最先端まで中小企業が“匠の技”を光らせている。ただ下請け構造に組み込まれていることも否めない。そこで地域が持つ各種の情報や知恵の共有をうながし、ブランド力を高めるために「みせるばやお」をスタートさせた。八尾ローカルナレッジシェア推進ラボの取り組みを紹介する。

 八尾市は河内音頭のふるさとであり、毎年9月上旬には夏の風物詩として「八尾河内音頭まつり」が開かれる。2018年には2782人が盆踊りを同時に踊り、世界記録に認定された。市内の玉串川にかかる桜並木は八尾の隠れた名所の1つだ(写真1)

写真1:市内の玉串川にかかる桜並木は八尾の新春の風物詩

 「八尾えだまめ」や「八尾若ごぼう」といった特産物もある(図1)。大消費地に隣接していることから鮮度が高く、八尾若ごぼうは全国でもトップクラスの出荷量を誇る。

図1:「八尾えだまめ」と「八尾若ごぼう」は八尾の特産品

 一方で八尾市は、ものづくりの街でもある。伝統を誇り全国屈指の生産量を持つ歯ブラシのほか、金属製品や電子機器といった最先端技術を使う製品まで、中小企業を中心に“匠の技”を使った、ものづくりは国内から注目されている。

 オンリーワンの技術を持つ企業も少なくない。ものづくり企業の最高峰アワードとして隔年で実施される「ものづくり日本大賞」では、第2回(2007年)~第7回(2017年)まで同市の中小企業が途切れることなく受賞が続いている。

技術力は高くても人材不足から新規事業に取り組めない

 高い技術力を有する企業が存在するものの、下請体質の企業が多いのも事実で、企業それぞれの認知度は低いのが実態だ。加えて、景況感は上向いているにもかかわらず、市内企業の60.3%が人材不足に悩んでおり、新規事業への参入や事業拡大などに取り組めない状況にある。

 折しもIndustry4.0をはじめ、クラウドやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)といったテクノロジーを使ったイノベーションが求められ、既存事業においても効率化や高付加価値化への関心が高まっているが、そもそもが人材不足のなかで、IoTや収集したデータの分析、それに基づく製品開発力や企画力を持つ人材の育成・確保は大きな課題になっている。

 八尾市が将来にわたり発展し、SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)の観点から持続性の高い地域社会を形成していくためには「ローカルイノベーションエコシステム」、すなわち急激な社会変革に適応し、地域課題を自ら発見し自ら解決・学習する地域の形成が必要不可欠だ。

 こうした課題認識から2018年8月8日に始動したプロジェクトが「八尾ローカルナレッジシェア」だ。その推進母体として「八尾ローカルナレッジシェア推進ラボ」が地方版IoT推進ラボの第4弾として選定された。