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  • 本当にビジネスの役に立つSAP流デザインシンキングの勘所

いま「デザインシンキング」を語る意味【第1回】

原 弘美(SAPジャパンソリューション統括本部イノベーションオフィス部長)
2018年12月5日

日本で「デザインシンキング(Design Thinking)」という言葉が広まりだしたのは2014年頃。多くの人々がデザインシンキングに期待し、その活用に取り組んできました。それから4年が経った2018年末。デザインシンキングのブームがビジネスの世界にもたらしたものが何だったのかを振り返り、その価値や活用のあり方について改めて考えてみたいと思います。

 「デザインシンキング(Design Thinking)」は、 ビジネスにおけるイノベーションの必要性が高まり「これまでの延長線上では新しいものは生み出せない」という焦燥感を背景に、大きな期待を集め、多くの人々が書籍を購入し、体験ワークショップに参加してきました。

 一方で、SNS(Social Networking Service)などでは、ブームの終焉を示すかのように「デザインシンキングは本当に役に立つのか?」という論調の意見が盛んに共有され始めています。本当に、そうなのでしょうか。

 デザインシンキング・ブームの起点の1つは、独SAPの創業者であるHasso Plattner(ハッソー・プラットナー)氏が2003年、米シリコンバレーに私費を投じて設立したデザインシンキングの研究拠点「Hasso Plattner Institute of Design at Stanford(D-School)」の活動にあるといえるでしょう(写真1)。

写真1:米シリコンバレーにあるHasso Plattner Instituteの外観

 D-Schoolでの成果を元に独SAPは、ERP(統合基幹業務システム)のソフトウェアベンダーからIoT(Internet of Things:モノのインターネット)へも対応したデータ活用プラットフォームのベンダーへとイノベーションを遂げました。

 筆者は、独SAP が対外的に「Design Thinking with SAP」を展開し始めた2013 年より、SAPジャパンにおけるデザインシンキングの展開および顧客企業における実活用を支援してきました。

デザインシンキングの価値を考えるための3つの切り口

 今回、改めてデザインシンキングの価値を考えるに当たり、本連載における3つの切り口を考えました。1つは「ビジネスとデザインシンキング」です。ビジネスの現場でデザインシンキングをどう役立てられるのかは、デザインシンキングを学んだ直後のビジネスマンが最初に抱く典型的な疑問です。「最終消費者に体験や商品を提供する企業にしか適用できないのではないか」といった問いに答えていきたいと思います。

 2つ目は「企業とデザインシンキング」という切り口です。大企業などではすでに、何らかの形でデザインシンキングを経験済みではないかと思います。ただ、そうした企業が陥りがちな”典型的症状”があるもの事実です。筆者が勤務する独 SAPでは、デザインシンキングがグローバルに大変盛んに活用されています。その歴史も一例としながら、典型的症状に対し、日本企業がデザインシンキングをどのように活用できるかを考えてみます。

 そして最後の切り口が「ビジネスマンとデザインシンキング」です。そもそも、ビジネスマンにデザインの能力は必要なのでしょうか。

 本連載では、社会で起きていることを振り返りながら、「デザインシンキングは習得する価値がある能力なのか」「習得できたとして何がメリットなのか」「デザインシンキングの習得に向けて、どのようなことができるか」について、私が今、考えていることをご紹介したいと思います。