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社会課題の解決にAIは貢献できるのか
Googleの「Solve with AI」に世界の先端事例を見る
環境保護1:絶滅危惧種の追跡=NOAA(米海洋大気庁)とGoogle
絶滅危惧種の保護に関する取り組みである。現時点では絶滅が危惧されているザトウクジラを対象にしている。研究者が19年間に渡り海底に設置したマイクで録音してきた海中の音のデータからザトウクジラの声だけを抽出するためにAIを活用することで、クジラの行動分布を示す地図を作成している。
ザトウクジラは広大な海洋で暮らしており、その調査は困難を極める。NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration:米国海洋大気庁)の研究者は、音波が水中では空気中よりも、はるか遠くまで伝搬することに着目し、海中の音を録音してきたが、その中からクジラの声だけを抽出するのは不可能だった。
そこでNOAAとGoogleが共同で、多くのノイズの中からザトウクジラの声だけを抽出するアルゴリズムを構築。収録した膨大な量の音声データから、ザトウクジラの鳴き声の波形だけを選ぶためにAIを用いている。
環境保護2:熱帯雨林の違法な伐採の監視=米Rainforest Connection
熱帯雨林の保護に取り組むのが米ベンチャー企業のRainforest Connection。同社によれば、ジャングルでは木を違法に伐採して売りさばく犯罪組織が暗躍しており、実に伐採の90%までが違法なものだという。だが取り締まる側のレンジャーの人員は限られているため、広大な熱帯雨林の中で伐採の現場を押さえるのが難しい。
そこでRainforest Connectionは、旧式のスマホの周囲にソーラーパネルを360度エリマキトカゲのように組み付けた音のセンサーを開発。それを森林の高い木の上に設置し、収録した音声をクラウドにアップロードする。その音声データから伐採時に出るチェーンソーの音だけをAIで抽出し、アラートを出すとともに伐採位置を地図に表示する。
同システムによってレンジャーは、今まさに木を伐採している現場に直行できる。インドネシア・スマトラのテナガザルの保護区で2013年に同システムを導入したところ、違法伐採の摘発に成功したとしている。
環境保護3:ごみ分別へ向けたインセンティブづくり=Gringgo インドネシア財団
ごみ処理は世界的に問題になっている。Gringgoインドネシア財団は、インドネシアのバリ島において、ごみを分別して処理することを習慣付けることに取り組んでいる。
そこで開発したのが、散乱するゴミを撮影すると、リサイクルできるごみに対して、その買い取り金額を表示するスマホ用アプリケーション。ごみ処理の過程に金銭的なインセンティブを加えることで、ゴミの分別と削減を狙う。
同アプリの開発においては、収集したごみを個別に撮影し、膨大な量の画像データベースを作成。それをAIに学習させることで、ゴミの種別を分類できるようにした。