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社会課題の解決にAIは貢献できるのか

Googleの「Solve with AI」に世界の先端事例を見る

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2019年8月15日

社会課題の解決にAI(人工知能)はどのように貢献できるのか--。米Googleが支援している世界各地での取り組みについて、報道機関に紹介するイベント「Solve with AI」が東京・六本木のGoogle日本法人オフィスで2019年7月10日に開かれた。世界でさまざまな社会課題の解決に取り組むベンチャー企業やGoogle自身が、それぞれの取り組みを紹介した。

 「Solve with AI」は、社会課題をAI(人工知能)で解決しようとている世界各地の取り組みをメディアに紹介するためのイベント。東京・六本木のGoogle日本法人オフィスで20197月10日に開かれた「Solve with AI」には、アジア太平洋地域の記者や関係者が集まり、GoogleのAI領域の研究者や、Googleの支援を受け社会課題の解決に取り組むベンチャー企業などの代表者の報告に耳を傾けた。

コンピューターの“見る”“聞く”“話す”“理解する”が可能に

 Solve with AIの開会に当たっては、米Googleのシニア フェローでAIを統括するJeff Dean氏が登壇し、同社におけるAIを使った社会課題の解決への取り組み状況を紹介した(写真1)。

写真1:米Googleのシニア フェローでAIを統括するJeff Dean氏

 具体的には、AIで社会課題の解決を図るためのプロジェクト「AI for Social Good」を展開。新たに世界の非営利団体や研究機関などを対象に「Google AI Impact Challenge」を実施していることなどだ。Google AI Impact Challengeでは、公募により20件の取り組みを採択し、資金面も含めて支援する。

 その背景についてDean氏は、「機械学習によってコンピューターは、さまざまな現象について“見る”“聞く”“話す”“理解する”ことが可能になった。コンピューターの能力も格段に向上したことで、困難な社会問題や環境問題などコンピューターサイエンス以外の分野でもAIが解決できるようになってきた」と説明する。

 同時に「AIの誤った使用を防ぐための倫理規範を持つことも重要だ」(Dean氏)と指摘した。「Googleで実施されていた100以上のAIプロジェクトについて、規範に則っているかを再検証した。機械学習の公正さについても、数千人のエンジニアに対し教育プログラムを実施した。プライバシー、セキュリティについての研究も進めている」(同)という。たとえば、データを利用者のデバイス側に置いたまま機械学習モデルの学習ができる「Federated Learning」を、その一例に挙げる。

 AIによる課題解決の対象範囲の広がりには、Googleが提供する機械学習のオープンソースライブラリ「TensorFlow」が寄与しているという。これまでに世界でのダウンロード数は4100万を超えた。さらにDean氏は、専門家でなくても機械学習を実行できる「Auto ML」という仕組みがあることも強調した。

地球環境や人類を守る取り組み、生活を豊かにする取り組みなどが進行中

 今回の「Solve with AI」で紹介された事例は8件。大きく(1)地球環境保全の支援、(2)人類を病気や災害から守る取り組み、(3)生活を豊かにする/産業を支援する取り組みに分けられる。使用しているAIに着目すれば、画像認識と音声などの波形分析に2分できる。

 以下、取り組みごとに発表の概要を紹介する。