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  • スクラムで創るチームワークが夢を叶える

イノベーションを生み出すチームは職能横断が条件【第2回】

和田 圭介(Scrum Inc. Japan Senior Coach)
2019年10月15日

現在の日本企業の働き方はビジネス部門とエンジニア部門が別々

 さて、現在の日本企業の働き方はどうなっているだろうか?まず多くの企業では、デジタルサービスの企画・開発を担うビジネス部門とエンジニア部門が別かれている。エンジニア部門の中でも設計・開発・テスト・運用といった工程ごとに部門が別かれている場合が多い。会社によっては設計以降、外部の協力会社に委託することもある。

 こうした企業が新しいサービスを開発する場合、まずビジネス部門が、市場環境や顧客のニーズをすべて分析し、サービス要件を定義する。次に設計部門がサービス定義書に基づいて設計し、システム設計書を作成する。そして開発部門が設計書に基づき開発する。続いてテスト部門が受入テストをする(図3)。

図3:多くの日本企業のデジタルサービス開発は工程ごとに分断されている

 テストに合格すると本番環境への移行判定会議が開かれ、運用部門が本番環境にデプロイする。サービスの企画・開発に携わるメンバーは、部門やドキュメント、承認プロセスによって分断されている。この働き方の問題点はなんだろうか?

 上記のやり方では、サービスに携わるメンバーが分断されており、互いの共感が入り込む余地がない。市場環境や顧客のニーズは最初にすべて分析され、その後、ドキュメントに基づいて、各人の作業に分解される。

 結果として、プロダクトに対する想いを皆で共有しないままに、各工程で作業をするメンバーは書面に書かれている通りに仕事を黙々とこなす。多くの場合は、半年や1年といった長期間のプロジェクトの間、成果に対するフィードバックを得る機会や仕事のやり方を見直す機会もない。メンバーの中での想いやノウハウの蓄積も少ない。

 こうした働き方から生まれたデジタルサービスには、想いが込められていないUIや使いにくいUX、レガシーなアーキテクチャー、複雑でメンテナンスが難しいコード、高い頻度でのバグ発生が現れることが、スクラム開発に比べて多いと筆者は感じる。こうしたやり方を続けている限り、日本発のデジタルサービスにおいてイノベーションが生み出されることは非常に難しいだろう(図4)。

図4:スクラムと現在の日本企業の比較

 今、日本企業に求められるのは、ビジネス部門とエンジニアが心の底から想いを伝え合い、そうして生まれた新たなコンセプトをチーム一丸でプロダクトとして作り上げていく働き方だ。それは日本企業が70年代に産み出し、世界を驚かせたやり方にもう一度、回帰することではないだろうか?

 次回以降は、筆者も立ち上げに協力した三越伊勢丹ホールディングスのスクラムチームの実例を踏まえながら、企業の中にイノベーションチームをどのように結成し運営していくべきかを説明していきたい。

和田 圭介(わだ・けいすけ)

Scrum Inc. Japan Senior Coach。大学卒業後、KDDIにおけるIoTビジネス・クラウドビジネスの立ち上げ、トヨタ自動車への出向などを経て、2019年4月より現職。KDDIにおけるスクラム導入、プロダクトオーナーとしての経験を生かし、主に大企業におけるスクラム導入を支援。スクラムの普及を通じて、日本中の働く人々が幸せになり、日本から新たなイノベーションが次々と生み出されるようになることを目指している。

「スクラムの父」サザーランド氏や「スクラムの祖父」野中氏らが登壇する「Scrum Interaction 2019」が2019年11月8日に開催されます。申し込みページにてプロモーションコード「impress」を入力するとチケットが20%オフになります。

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