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- スクラムで創るチームワークが夢を叶える
スクラムは大規模組織にも適用できる拡張性を持っている【第3回】
大規模な組織でもスクラムの考え方は同じ
大規模システムを開発するような大所帯の組織では、どうなるのだろうか。スクラムでは、規模の大小に関わらず、考え方は共通である。
同じプロダクトを開発するチームは、最大5チームを一連のスクラムチームとする。これを「スクラムオブスクラム」と呼ぶ。さらに大規模なプロダクトや複数のプロダクトを持つ事業であれば、最大5つのスクラムオブスクラムから構成されるスクラムオブスクラムオブスクラムを組む。これを繰り返すことで、スクラム組織はスケールフリーに拡張できる。
チーム同様、それぞれのスクラムオブスクラム、あるいはスクラムオブスクラムオブスクラムにも優先順位を決めるプロダクトオーナーと障害物を取り除くスクラムマスターを置く(図2)。
スケーリングしたスクラム組織の最上位には、2つのリーダーシップのスクラムチームを置く。1つは、会社のビジョンや戦略とチームの方向性を揃える「エグゼクティブメタスクラム(EMS)」である。EMSは各レベルのプロダクトオーナーと連携し、会社全体のバックログにビジネス価値に基づく優先順位をつけ、顧客からの学びを会社のビジョン・戦略に反映させる。
もう一つは、チームでは解決できない障害を解決する「エグゼクティブアクションチーム(EAT)」だ。EATは各レベルのスクラムマスター と連携し、チームの生産性を向上し、より顧客にフォーカスするために必要な新たな組織構造、すなわち承認プロセスや人事評価プロセスなどを確立していく。
EMSとEATを中心に、プロダクトオーナーのサイクルとスクラムマスターのサイクルを繰り返すことで、スクラム組織は、ビジネス価値の高いサービスプロジェクトにフォーカスし、顧客の学びに基づく会社のビジョン・戦略の素早い反映と組織構造の最適化を繰り返ししながら、持続的なイノベーションを生み出していく(図3)。
和田 圭介(わだ・けいすけ)
Scrum Inc. Japan Senior Coach。大学卒業後、KDDIにおけるIoTビジネス・クラウドビジネスの立ち上げ、トヨタ自動車への出向などを経て、2019年4月より現職。KDDIにおけるスクラム導入、プロダクトオーナーとしての経験を生かし、主に大企業におけるスクラム導入を支援。スクラムの普及を通じて、日本中の働く人々が幸せになり、日本から新たなイノベーションが次々と生み出されるようになることを目指している。