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  • スクラムで創るチームワークが夢を叶える

スクラムは大規模組織にも適用できる拡張性を持っている【第3回】

和田 圭介(Scrum Inc. Japan Senior Coach)
2020年2月10日

これまで、イノベーションな組織とはネットワーク型のチームであり、そのチームは職能横断型であることを説明してきた。それを体系化したのがスクラムだ。だが大規模な組織にあっては、チーム型のスクラムが適用できるかどうか疑問があるかもしれない。今回は、スクラムが拡張性に対し、どう対応しているかを説明する。

 スクラムは、70年代・80年代の日本の製造業における企画開発プロセスやトヨタ生産方式にインスパイアされて生まれたチームベースの働き方である。まずは、スクラムチームが実際に、どのような働き方をするのかを具体的に説明していこう。

 スクラムチームは、(1)顧客とチームのインタフェースになる「プロダクトオーナー」、(2)実際のプロダクトを生み出す開発チーム、(3)チームの障害を取り除く「スクラムマスター」で構成される。「スプリント」と呼ぶ短い期間で開発を繰り返す。期間としては、多くのチームが1〜2週間を採っている。

 スプリントでは最初に、プロダクトオーナーが開発チームに対し、ビジネス価値に基づいて優先順位づけされた、やるべき仕事のリストである「バックログ」を提示する。

 開発チームは、スプリントで開発するバックログを自ら選択し、仕事のやり方も自分たちで決める。そしてスクラムマスターは、開発チームの仕事を見える化し、ゴールの達成を妨げる障害物があれば、それが取り除かれるようにする。

 スプリントの終わりでは、プロダクトオーナーが実際の顧客をチームの仕事場に連れてきて、スプリントで生み出されたプロダクトに対するフィードバックを求める。その後、チームだけで、スプリントの仕事の進め方を振り返り、次のスプリントに向けて、自分たちの働き方を自分たちで改善する(図1)。

 このようにしてスクラムチームは、ビジネス価値の高いバックログにフォーカスし、顧客からのフィードバックによる学びとプロセスの改善を繰り返しながら、イノベーションを実現する(図1)。

図1:チームレベルのスクラム。スクラムチームは短いサイクルで改善を繰り返しイノベーションを実現する