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  • ドローンの業務活用を考えるための基礎知識

ドローンの“苦手”を理解し新たな適用範囲を考える【第2回】

吉井 太郎(センシンロボティクス 執行役員 エバンジェリスト 兼 サービス企画部長)
2020年2月21日

前回は、労働人口の減少に伴って高まっているドローンの活躍シーンを紹介しました。今回は、ドローンという“ツール”そのものを深掘りしてみます。ドローンは他の機械には真似のできない強みを持ち多くの可能性を秘めています。ですが万能ツールではありません。苦手な作業もあります。

 ドローンの業務での活用を考える際の大前提は「ドローンは道具(ツール)である」ということです。さまざまな道具と同様に、使いどころを間違えると、その力を発揮できないばかりか、思わぬ事故につながる恐れもあります。ドローンが持つ力をフルに活用できるよう、ドローンが苦手なことと得意なことを考えてみましょう。

苦手1:ドローンでモノを運ぶ

 ドローンと聞いて、まず思い浮かぶのが物流や宅配の用途ではないでしょうか。米Amazon.comや米Googleなども取り組んでおり、それらの取り組みがニュースとして大々的に紹介されています。しかし、さまざまなドローンの用途にあって「モノを運ぶ」という仕事は実は苦手なことの1つです。

 表1は、国土交通省がまとめた各輸送機関の貨物輸送にかかるエネルギー効率を示したものです。単位は「キロジュール(KJ)/トンキロ」で、1トンの貨物を1キロメートル運ぶのに必要なエネルギー量を表しています。比べるまでもなく、航空貨物が断トツにエネルギー効率が悪いことがわかります。同じ貨物を同じ距離運ぶためには、鉄道の45倍以上のエネルギーが必要です。

表1:2013年(平成25年)度の輸送機関別消費エネルギー原単位(キロジュール/トンキロ、国土交通省まとめ)
輸送機関鉄道自動車船舶(国内)航空(国内)
消費エネルギー原単位414.54327.65241万8931.2

 ドローンも航空機ですから、陸上の輸送手段に比べて不利です。そのドローンの中でも特に、複数の回転翼(プロペラ)で飛行するマルチコプタータイプは、エネルギー効率が悪いとされています。ペイロード(積載物)の最大重量は通常数キログラム~10キログラム程度ですが、満載時の飛行時間は空荷の半分程度になってしまうのが一般的です。

 そんなドローンですが、ドローンでモノを運ぶべき場面は存在します。それは災害時の緊急物資や医薬品、移植用臓器等の輸送です。障害物がない大空を飛ぶメリットを最大限に活かせる場面です。2019年には、米メリーランド大学が開発したドローンが移植用の腎臓を世界で初めて搬送し、手術が無事成功したとのニュースがありました(写真1)。

写真1:米メリーランド大学が開発した臓器搬送用ドローン。臓器の状態を監視する装置など種々の安全装置を備えている

 ほかにも、陸上輸送に必要なインフラが整っていないアフリカでは、輸血用血液や医薬品をドローンで配送する事業が始まっており、今後の期待が高まる領域です。