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テレワークに不向きな業務を強調することへの違和感【第3回】

能地 將博(日本アバイア ビジネスデベロップメントマネージャ)
2020年10月22日

第1回で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い「テレワーク」が“流行る/流行らない”で話題になっていることへの違和感を述べました。そして前回は、テレワークを実施するための具体的な方法を考えてみました。しかし、テレワークに向いていない職種や用途があるのは事実です。今回は、テレワークでの向き/不向きについて考えてみましょう。

 筆者は第1回で述べたように、「テレワークのほうが効率的ならテレワークで、オフィスに行ったほうが効率的ならオフィスで仕事をするべきだ」と考えています。曜日などによって決められた日にテレワークを実施するテレワークではなく、臨機応変に、目的や効果に応じたテレワークをすべきです。

 そうした働き方の実現をサポートするのが、各種のITソリューションです。コラボレーションツールに関して言えば、前回触れたように、導入の手間やコストをかけず安価に実現できるようになってきています。

 一方でテレワークへの移行に関しては、「人事考課などのジョブディスクリプションが策定できていないと難しい」と良く指摘されています。

 そうした側面があることは否定しません。ただ「69.4%の会社員がテレワーク継続を望んでいる」(第1回参照)なかで、その完成を待っていたのでは、すでに策定済みの会社と生産性や待遇面で差が開くばかりです。まずはテスト的にも試してみてはいかがでしょうか。

 とはいえテレワークに向いていない職種や用途もあります。物理的に手を使ったり、モノに触れたりする必要がある業務や職種は、どう考えてもテレワークには向きません。医療従事者や、生活必需品の販売、製品の修理などです。製造業におけるテレワークが事務職限定になるのも理解できます。

 こうした”物理的”な理由を除外し、いわゆるオフィスワーカーがテレワークを実施するうえで考慮すべき指標は「スキル(習熟度)」と「コミュニケーション人数」です(表1)。

表1:スキル(習熟度)と会話する人数がテレワークの有効性/生産性に影響する

習熟度が低い人のフォローはより丁寧に

 前回述べたように、オフィスワーカーが取り組む業務には、一人で実施する作業が多数あります。参照する資料(デジタルデータ)やサイトへのアクセス環境が整っていれば、オフィスにいる時となんら変わらずに業務を遂行できるでしょう。

 その作業を1人でこなせるスキルが高い方は、テレワークでの生産性には全く影響を与えないことでしょう。1人で集中できることで、より生産性が高まる可能性もあります。

 一方、スキルが低い、あるいは新入社員や転職したばかりの方(以下、総称として「ニューカマー」と呼びます)は、1人での仕事は、なかなか難しいかもしれません。

 しかし、ニューカーマーがオフィスで取り組んでいる業務を見ていると、1人で仕事をしている時間は意外に多いのではないでしょうか。当然、仕事内容は指示されたことが中心で、つまずくことも多いことでしょう。上司や先輩、同僚にちょくちょく質問しているかもしれません。「リモート環境では難しい」ですか?

 第2回で述べた「ちょっとした相談」や「ちょっと画面を見て下さい」を思い出してください。チャットや画面共有ツールを使えばリモート環境でも、そうした確認作業は可能です。

 「ツールがあっても、なかなか聞きづらい」という声が挙がるかもしれません。しかし、それは運用ルールの問題です。企業のチャット運用ルールとしてオフィスと同様に気軽にチャットができる不文律を明確化してしまえば、この点は解決できるはずです。

 第1回でも指摘した「オフィスにいかない罪悪感」同様に、「質問は直接、相手の席に行き、丁寧にお願いするのがマナー」といったことは“古い固定観念”と考えるようにすればいいのです(チャットでも丁寧にお願いするのは当然です。念のため)。

 オフィスでは上司に「ちょっといいですか?」と声をかけたら電話中だったといった経験は誰しもあることでしょう。これがチャット環境なら、相手のプレゼンス(状況)を事前に確認して声を掛けられるのですから、相手の状況に配慮した、よりスマートなコミュニケーション手段なのです。

 ニューカマーに対しては、コミュニケーションを取り易くしてあげる以外にも、仕事の進め方や方針などについて、事前に、あるいは適宜、より詳しく説明する必要があります。進捗確認も、スキルが高い人よりは頻繁に行う必要があるでしょう。しかし、これはテレワークだからというわけではなく、実際のオフィスでも同様です。テレワークでは、より意識する必要があるということです。