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日本各地で始まる公共分野への3D都市モデル活用【第5回】

藤井 篤之、増田 暁仁(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部)
2021年12月8日

「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」は、2020年4月に始動した国土交通省主導による都市のデジタルツインを作成するプロジェクトだ。すでに複数の民間企業が自治体と連携し、3D(3次元)都市モデルの公共分野でのユースケースの開発に取り組んでいる。今回は防災分野を中心に、公共分野における3D都市モデルの活用事例を紹介する。

 「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」は、まちづくりにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのプロジェクトだ(第4回参照)。日本全国の3D(3次元)都市モデルを整備することで、都市計画やまちづくり、防災、都市サービスの創出などでの活用を目指す。

 3D都市モデルやデジタルツインは公共領域において、どのような価値の源泉になるのだろうか。

シミュレーションの精度高めるデータや視覚性に価値の源泉

 3D都市モデルがもたらす価値の源泉としては(1)ビジュアライズ(視覚性)、(2)シミュレーション(再現性)、(3)インタラクティブ(双方向性)が挙げられる(図1)。

図1:3D都市モデルが提供する価値の源泉(出所:国土交通省「Project PLATEAU」ホームページ)

 都市空間の3Dモデル化により視覚性が高まることは、情報の説明能力を増し、多様な関係者間での共通理解や意志決定などに役立つ。

 3D都市モデル(City GML:Geography Markup Language)は、「Google Earth」などの商用3Dマップと異なり、都市空間を意味のあるものとして再現するセマンティック(意味論)モデルだ。都市空間に存在する建物や街路などのオブジェクトに、名称や用途、建設年といった情報が付与されている。セマンティックモデルというデータそのものが、各種シミュレーションの幅を広げ精度を高める。

 加えて、現実空間が測量され再現された3D都市モデルは、フィジカル空間とサイバー空間が同期し双方向に情報を交換し作用しあうためのプラットフォームであるデジタルツインを再現する際のインプットデータになり得る。

 これらの価値の源泉を公共領域に適用して考えてみる。ビジュアライズ(視認性)は、災害や事故の発生時など緊急時における意思決定や、都市計画時の可視化に役立つ。

 シミュレーション(再現性)は、交通管制や警備、都市インフラの遠隔からの保守・点検といった用途だけではなく、仮想空間を使って影響範囲を検証・シミュレーションする「デジタルサンドボックス」といった研究開発や、大規模水害が発生した際の浸水リスクなどの分析に役立つ。

そしてインタラクティブ(双方向性)は、可視化した都市計画に対し、住民からのフィードバックをプランニングに活かすなどが考えられる。

 こうした3D都市モデルの価値を踏まえながら、公共分野でのユースケース開発に向けた取り組み事例をみてみたい。