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庫内作業を無人化する自動運転フォークリフト(AGF)の活用とシン・WMSの必要性【第8回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年4月18日

最先端の物流センターは無人化への歩みを始めています。倉庫内での運搬作業の代替では、AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)やAGF(Automated Guided Forklift:無人搬送フォークリフト)の導入が進んでいます。AGV/AGFは、AI(人工知能)技術を使った機械学習機能などにより進化が著しく、機器自体が自律的に作業できるようになってきています。AGVについては第4回で説明しました。今回はAGFについて説明します。

 物流センターにおける庫内作業は近年、格段に取扱量が増えています。労働力不足もあり、自動化・無人化への流れを加速させる必要があります。特に運搬作業は、EC(電子商取引)ビジネスの拡大もあり、増える一方です。コンベヤーなどの自動搬送機器もありますが、そうした機器から機器、機器からトラックや別の場所への積み替えなど、運搬作業は残ります。フォークリフトを使った作業場面などを目にしたこともあるでしょう。

無人と有人を切り替えられるライダー型AGFが先行

 そのフォークリフトを無人で走行可能にしたのがAGF(Automated Guided Forklift:無人搬送フォークリフト)です。AI(人工知能)技術の進展を受け、人が指示しなくても自律的に動作できる範囲が広がっており、作業者が不在でもピッキングや仕分け、運搬などが可能になってきています。

 現状、AGFの庫内作業速度は人による作業スピードより遅くなります。そのため、作業者が不在になる夜間などに稼働させ、朝までに完了させるという使い方が多いようです。AGFの研究開発は最近、大きく加速しており、作業スピードが人を超える可能性が高まっています。そうなれば、日中でも、高い作業効率を維持しつつ、倉庫作業の無人化を推進できることになります。

 AGFの中で、いち早く導入が進んでいるのがライダー型AGFです。ライダー型は人が操作するための装備も持ち、無人運転と有人運転を切り替えられます。一般的な人が操作するフォークリフトを利用している現場では、完全無人型をいきなり導入するよりも、ライダー型を導入し、必要に応じて無人搬送にするほうがスムーズに移行できます。日中は有人で、夜間は無人という形でAGFを活用するといったことが可能です。

 パレット単位ではなく、ケース単位で運搬している場合はコンベヤ搬送が中心になっている倉庫が少なくありません。フォークリフトに対応したパレットピッキング対応型の庫内レイアウトになっていないからです。

 その場合は、例えばコンベヤー搬送のラインを取り外し、多層型のオートスルーラック(可動式水平流動棚)を設置しAGFを併用すれば、AGFでパレット荷をオートスルーラックに格納し、出荷依頼に応じてラックの出荷サイドから作業者が取り出すことで、スペースを有効に活用できます。

 コンベヤーで出荷エリアまで搬送し、出荷検品後に自動梱包機で梱包するという方法もあります。ロボットパレタイザーを追加すれば、自動梱包した貨物をパレット荷に自動で積み替えられます。

 AGFで運搬する貨物にRFIDタグを搭載し貨物情報を可視化すれば出荷検品の工程を省けます。パレットにRFIDタグを組み込んだスマートパレットを使用します。AGFにはRFIDタグと通信が可能な無線リーダーを搭載し、パレット荷の保管ラックにはRFIDタグを設置します。無線リーダーとRFIDタグの距離が受信電波の強度で判別できるため、パレット荷の位置がリアルタイムに把握できるようになります。

WMSの一層の高度化が必要に

 上記のようなAGFの使い方をしようとすれば、システム連携の観点からWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)の、より一層の高度化が必要になります。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)時代のWMSは、作業の標準化・平準化を念頭に置いています。それを目的にした指標が提案されていたり設定できたりします。日次・月次レベルで荷役の生産性に関する実績レポートなどの作成し、作業者別やセンター別などで作業時間・作業量などの実績を可視化できるシステムもあります。

 実績データの分析はこれまで、経験を元に手作業で実施されることが一般的でした。AI活用型のWMSでは、作業データをAI技術を使って分析し、作業状況の進捗を管理できます。単に入荷から入庫、保管、出庫、出荷まで一連の作業の進捗情報などを管理するだけでなく、物流ロボットやAGFに入出荷指示を出したり、過去の入出荷指示データを提供したりも可能です。