- Column
- 顧客の声が導く次なるCXのシナリオ
JCOM、VoC全社活用とデジタルヒューマンの顧客接点創出をAI-CoEが支える
「CX Day 2026」より、DXデザイン本部/AI-CoEの鎌田幹生 氏
AI(人工知能)技術の進化が、VoC(Voice of Customer:顧客の声)の分析・活用規模を変えていく。だが真の価値は、そこで得た知見をどこまで商品開発や品質改善、次の顧客接点の設計へ結び付けるかにある。ケーブルテレビ事業などを手掛けるJCOMでDXデザイン本部/AI-CoEを率いる鎌田 幹生 氏が「CX Day 2026」(主催:インプレス DIGITAL X、2026年6月19日)に登壇し、VoCの全社活用とデジタルヒューマンによる新たな顧客接点構築の狙いを語った。
「AI(人工知能)技術の恩恵を、一部の部署にとどまるだけの道具にしない。商品開発から、工事、営業、カスタマーサポートまで、バリューチェーンのすべてにAI技術とデータの活用を展開していく。それが私たちの進め方だ」--。JCOM DXデザイン本部/AI-CoEの鎌田 幹生 氏はこう強調する(写真1)。
JCOMの主な事業は(1)ケーブルテレビやインターネット回線などを提供するコンシューマー向けのケーブル・プラットフォーム事業、(2)ケーブルテレビ事業者や地方企業、地方自治体向けにITサービスを提供する事業、(3)CS放送のチャンネル運営や映画製作などを担うメディア・エンタテインメント事業、の3領域からなる。
そこから集まる顧客データは大きく2系統に分かれる。1つはパーソナルIDに紐付く約580万世帯規模のプロファイルデータだ。ここにはテレビサービスや動画配信の資料履歴、電力使用量などのインフラ利用のログを含む。
もう1つは、コンタクトセンターの対応履歴や営業接点、モバイルアプリケーションなどのデジタルチャネルのデータだ。JCOMは「商品開発やネットワークといった上流から、営業・カスタマーサポートまで続く顧客接点にまで、データを掛け合わせて活用している」と鎌田氏は説明する。
コンタクトセンターやSNSなどでVoCを収集・活用
そのJCOMは、AI技術の進化を「事業会社自身が主体的にAI活用できる好機」(鎌田氏)と捉え、3年前に本格的なAI活用に踏み切る。
この方針を推進するのが、全社横断のバーチャル組織「AI-CoE(Center of Excellence)」だ。最新のAI動向をリサーチするシンクタンク機能を軸に「社内プロジェクトの立ち上げや推進支援を担っている」(同)という。チームはデータサイエンス、データ基盤運用、リスク管理を横断的に編成し、鎌田氏は推進役を担っている。
全社でのユースケースは、マーケティングキャンペーンや商品開発、クリエイティブの自動生成などと幅広い。企画職向けには「Microsoft Copilot」や「Gemini」導入のほか「顧客対応領域でのデータ分析業務にもAI技術を組み込んでいる」(鎌田氏)状況にある。
最も先行して着手したのが、コンタクトセンター業務でのAI活用と、オペレーター支援システム「JAICO」だ(図1)。最初の取り組みは、顧客との通話開始と同時に自動で文字起こしを進め、内容を要約する「通話履歴要約」だ。ここには「顧客情報や対応ナレッジのレコメンド機能を順次追加してきた」(鎌田氏)という。現在1300名以上のオペレーターが機能を活用しており「月間1500時間以上の業務時間削減につながっている」(同)
さらに、NPS(Net Promoter Score:顧客推奨度)を軸にしたVoC(Voice of Customer:顧客の声)全件ダッシュボードも整備した。通話データや応対メモ、アンケートなどを生成AI技術に自動分類・評価させる。この結果を基にフォローの要否を一次判定し、BI(Business Intelligence)ツールでダッシュボード化して全社へ共有する体制となる。
同様の分析は、ネットワーク機器の訪問工事を担うサービスエンジニアの評価にも応用する。訪問後アンケートに対しては「NPSスコア6点以下の要因を2つ挙げ、代表的なコメントと件数を示す」といった指示を与えると、技術・スキル不足やコミュニケーション面の課題など、現場が改善アクションを検討しやすい具体的な示唆が得られるという。鎌田氏は「ポジティブなコメントを増やす活動が解約率の低減にもつながる」と見る。
また、SNS(Social Networking Service)上での投稿を生成AI技術で分析・モニタリングしてもいる。一例としては、JCOMのサービスメニュー変更や価格に対する反応のモニタリングなどだ。ほかにも「市場動向そのものの把握や営業スタッフに関する反応の集計など、多様な観点からSNSデータを活用している」と鎌田氏は強調する。

