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顧客体験を高めるために利用状況示すデータからも改善点を分析・提案する

米Autodesk CCO(最高顧客責任者) エリザベス・ゾーンズ 氏

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2023年1月12日

世界中のベストプラクティスを顧客に還元する

――顧客が求めるCXに業界別の特色などがあるか。

 顧客が当社の製品/サービスを使い始める動機には、各社の取り組みを拡大することもあれば、業界固有の課題を解決することもある。CXの質は、それぞれに異なっている。

 例えば製造業では、業務プロセスの生産性向上というゴールもあれば、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量を示すカーボンフットプリントの削減がゴールになることがある。

 ただこれまでは、製品導入により利益や効果をどれくらい高められるのかというROI(Return On Investment:投資利益率)が重視されてきた。しかし今は、コスト削減や生産性向上といった結果を特徴づけることは、顧客自身も困難になっている。

 そのため私が率いるチームでは、各社の目標に対する効果を顧客分析を通じて追跡することで協力し、顧客のイノベーションを加速する。世界中のベストプラクティスに精通した私たちが個々の顧客のカスタマージャーニーに共に取り組むことが、これからの支援策になると考えている。

――新たなCXの実現に向けた取り組み事例が、すでにあるか。

 戦略的なパートナーシップを結んでいる例はいくつもあるが、日本では大和ハウス工業とのパートナーシップが良い例だ。数年前からパートナーシップを結び、同社がBIM(Building Information Modeling)を全社標準にするための戦略的な取り組みを支援している(大和ハウス工業の取り組み事例)。

 戦略的パートナーシップでは、世界中のベストプラクティスを紹介し、他社の成功事例を理解したうえで、最良の結果を達成するための実装方法を決定できるよう支援する。

 なかには、どういう新製品を作るべきかについて、互いに助言しあっているケースもある。

 欧州の建設会社との事例では、アジャイル開発で重要視される初期の開発対象であるMVP(Minimum Viable Product:最低限実行可能な製品)に取り組むプロセスにおいて、「MLP(Minimal Lovable Product)」、つまり「最低限愛されるべき製品」を共に作ろうという取り組みにストーリーを転換できた。製品の機能だけでなく、「良好な体験を提供できなければ顧客から愛されない」ことを示した好例だろう。

――日本企業がAutodeskとの戦略的パートナーとして成功できる条件はあるか。

写真:「変革に必要なステップと構成要素を特定するための協創プロセスにおいては、顧客の成功にも帰属していると感じる」(ゾーンズ氏)

 日本の顧客は勤勉で、品質へのこだわりが強い。顧客の期待値も非常に高いだけに、それに応えられるだけの新しい顧客体験を提供できるように当社としても考えている。

 当社がパートナーシップの提携先を選別することはない。だが大和ハウスとの関係が良好な背景には、強力なリーダーシップを持つ経営陣が変革の必要性を認識し、社内で強調してくれたことがある。戦略的なプランの実現に向けた共創では、適切なレベルの人々の関与が大切だ。