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【COMPUTEX 2026:NVIDIA編】AIブームで続く台湾の経済成長とエコシステムとの結束、米NVIDIAが蜜月をアピール

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2026年8月7日

 新世代PCの登場は、性能の向上だけでなく「AI技術によってPCの使い方そのものを変容させる」(ファン氏)という。例えば、AI技術に何かをさせるにはプロンプト(指示文)に具体的な命令を入力して、指示を送る必要がある。

 しかしフアン氏は「10年後のPCは、タイプしてクリックするという操作が主役ではなく、ユーザーがやりたいことをアシスタントする存在に変化する」とみる。そこでは「電話がスマートフォンに進化したように、生活を一変させるものになると確信している」と強調する。

 例えば、米AdobeやMicrosoftが提供する専門性の高いソフトウェアは、エキスパートでなければほとんどの機能が使いこなせない。今後は「新製品のプレスリリースを作って」といった「目的」を入力するだけで、適切なアプリケーションの選択から起動、下書きの作成までを自動で実行する仕組みが実現するというわけだ。

 講演後にフアン氏は、これまた毎年の恒例パフォーマンスになっているが、各パートナー企業のブースを訪れ、NVIDIA製品に手書きのサインを残す(写真4)。

写真4:パートナー企業製品に書き入れられたフアン氏のサインは年々増え、NVIDIAの好調さを印象付けている

 それらをひと目見ようと会場に詰めかけた大勢の参加者たちは「NVIDIAがAIサーバーのみならず、AI PC市場をも席巻し、台湾市場をより活気付けてくれる」との期待を高めたのは言うまでもないだろう。

「学ばせるAI」から「考えさせるAI」へ

 NVIDIAの成長が今後も続くと信じさせられるのは、フアン氏が業界の一歩先を行く未来を見せるワードづくりの巧みさにある。生成AI技術が注目された直後には、AI技術を現実世界にもたらす「フィジカルAI」を発表し、今年は「フィジカルAIをも進化させるエージェントAIの時代がやってきた」(フアン氏)と唱える。

 フィジカルAIは、ロボットや自動運転車といったマシンに現実世界の事象を学習させて制御する。そこにエージェントAIを組み合わせると、マシンが自ら考え、周囲の状況や環境に合わせて自律的に動作するようになる。そうした高度な処理を高速に実現するには、ますます高性能なマシンやインフラが必要であり、そのために開発したのがVera RubinやRTX Sparkというわけだ。

 NVIDIAはAI開発に必要なライブラリやツール群も用意しており、提供する基盤上で、最適なビジネス展開や制作活動を実現できるとしている。今回はフィジカルAI開発を加速するものとして、ワールド基盤モデル(World Foundation Model: WFM)の最新版「NVIDIA Cosmos 3」を発表した。世界初の完全オープン型オムニモデルで、これまで数カ月かかっていたトレーニングと評価サイクルを数日に短縮できるとしている。

 併せて、人型ロボット(ヒューマノイド)の開発支援も進めている。今回、学術研究向けとして、中国Unitree(ユニツリー)の人型ロボット「H2 Plus」をベースに設計した「NVIDIA Isaac GR00T Reference Humanoid Robot」を発表した(写真5)。

写真5:研究開発用途向けに人型ロボット「NVIDIA Isaac GR00T Reference Humanoid Robot」も発表された

 身長6フィート(約183センチメートル)、体重150ポンド(約68キログラム)で、触覚機能付きの5本指ハンドを持ち、全体の可動部を75自由度に高めている。価格や提供形態は未公開だが、2026年後半の発売が予定されている。

需要増に向けて人材育成を支援し活躍の機会を提供

 AI技術の台頭は働き方を大きく変えると言われている。エージェントAIが普及すれば「ソフトウェアエンジニアは不要になるのではないか」という問いに、フアン氏は明確に「NO」と言う。「AI技術によってエンジニア1人当たりの生産効率が上がる。だから企業は、エンジニアをもっと雇用したいと思うようになるだろう」(同)としており、人材育成施策にも力を入れている。

 GTCでは、専門セッションやハンズオントレーニング(体験型研修)を実施しているほか、スタートアップ支援プログラム「NVIDIA Inception」を無償で提供している。プログラム参加者の発表と交流の場として、スタートアップが集まるCOMPUTEXのInnoVEXエリア内にブースも設けられていた(写真6)。

写真6:InnoVEXエリア内にある「NVIDIA Inception」のブースにはプログラム参加するスタートアップ30社以上が出展した。

 前述した開設予定の台湾新本社NVIDIA Constellationは、アジア太平洋地域の中核拠点に位置付けられ、今後数千人規模の採用が予定されているという話もあり、優秀な人材が台湾に集まる可能性も高まってきた。

 AI技術の後押しで成長を続けるNVIDIAと台湾エコシステムが、来年のCOMPUTEXでさらに進化する姿が見られるのか、楽しみなところである。