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ヘルスケアの分析:その1=ストレス・肥満・フレイルを防ぐ飲み物・朝食のモデル【第30回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2020年1月27日

飲み物による健康モデル

 複数のデータ分析の結果から、参考になる1つの飲み物によるモデルを示そう。

【モデルの例】

起床時:100%オレンジジュース(砂糖不使用のもの)
朝食時:豆乳、ヨーグルト(砂糖・脂肪ゼロのもの)
昼食時:乳酸菌飲料
風呂上り:100%野菜ジュース(砂糖・食塩不使用のもの)
夕食時:豆乳、ヨーグルト(砂糖・脂肪ゼロのもの)
普段:緑茶

 起床時のオレンジジュースは腸に良い刺激を与える。毎食、ヨーグルト(乳酸菌、ビフィズス菌)も採りたいところだ。不足するビタミンは塩分なしの野菜ジュースで補う。

 食事の際は、豆乳(大豆イソフラボン)をとる。細胞にダメージを与える活性酸素の働きを抑えてくれる。女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをし、女性の美しさや若々しさを手助けしてくれるようだ。

 乳酸菌飲料(乳酸菌シロタ株やプラズマ乳酸菌など)は腸の働きを支援することを売りにしている(図3)。ビフィズス菌は大腸で作用する菌だ。大腸の善玉菌の99%がビフィズス菌で1%が乳酸菌というデータが、そのことを裏付けている。

図3:乳酸菌の簡単な分類例

 乳酸菌シロタ株が入った同じメーカーの飲料でも、高密度になると結果が違ってくる。もともと腸内環境の改善は知られているが、高密度では、睡眠の質向上やストレス緩和にもなる。

 普段、喉が渇いたときは緑茶(ポリフェノール。その1つがカテキン)が良い。豆乳、お茶、青汁などには特定保健用食品(トクホ)に指定されている商品もあるので、購入時にパッケージを確認してほしい。国が安全性と効果を商品ごとに審査し、消費者庁が許可すればトクホのマークを付けられる。

 なお、他の飲み物としてアルコールがある。アルコールは適度には良いが、過度の飲酒は内臓に悪影響を与えるだけでなく、抜け毛になってしまう可能性も指摘されており要注意である。抜け毛が気になっている人は「遺伝だから仕方がない」と諦めず、タバコやアルコールを控えることも考えたい。

朝食による健康モデル

 筆者の31年間の食事メニューと体調データおよび他のデータを分析して言えることは、食事は、朝食では欠かさずに魚・大豆製品・野菜・練り物・梅干し・果物(ビタミンCが豊富なもの)の6点(ここでも「6」という数字が出た。第22回を参照)をとることをお勧めする。健康との因果関係の長年の分析で得た結論だ。

 ただし、病気のために、たんぱく質や塩分を控える場合は、この限りではない。魚や梅干しは控えたほうが良い場合もある。健康状態が普通であれば、これら6つの中で、特に魚に含まれる「DHA:ドコサヘキサエン酸」と「EPA:エイコサペンタエン酸」を食べることが、認知機能には効くと言われている。

 第23回で『〇〇する力』を説明した。認知機能は、記憶力(数字などを覚える力)や判断力(情報を適切に判断する力)のことである。つまり『〇〇する力』は遺伝や学習だけでなく食べ物とも深いつながりがあるわけだ。

 空腹時にも間食はしない。仮に食べるとすれば、ナッツ類(食塩無添加のもの)を手のひらで一つかみ程度をとると、余分なカロリーを採らなくてすむうえ、肝機能にも良いようだ。

病気手前の状態をいかに健康に戻すか

 健康状態は食生活・運動・睡眠のバランスで成り立っている。ストレス・肥満・フレイルの3つは健康状態と病気の中間の状態だから、食生活・運動・睡眠のバランスが崩れかけている兆しだとも言える。「病気でもなく健康でもない」がキーワードだ。

 そこでは、病気手前の状態をいかに健康に戻すかが大切になる。鍵は食生活・運動・睡眠であり、食事で足りないものは健康食品で補うことが考えられる。次回は、その健康食品、特にサプリメントを取り上げる。

入江 宏志(いりえ・ひろし)

DACコンサルティング 代表、コンサルタント。データ分析から、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ、GRC、次世代情報システムやデータセンター、人工知能など幅広い領域を対象に、新ビジネスモデル、アプリケーション、ITインフラ、データの4つの観点からコンサルティング活動に携わる。34年間のIT業界の経験として、第4世代言語の開発者を経て、IBM、Oracle、Dimension Data、Protivitiで首尾一貫して最新技術エリアを担当。2017年にデータ分析やコンサルテーションを手がけるDAC(Data, Analytics and Competitive Intelligence)コンサルティングを立ち上げた。

ヒト・モノ・カネに関するデータ分析を手がけ、退職者傾向分析、金融機関での商流分析、部品可視化、ヘルスケアに関する分析、サービスデザイン思考などの実績がある。国家予算などオープンデータを活用したビジネスも開発・推進する。海外を含めたIT新潮流に関する市場分析やデータ分析ノウハウに関した人材育成にも携わっている。