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- 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか
地元企業 × グローバル企業 × スタートアップが起こす化学変化【第20回】
会津若松の新たなエコシステム・プレーヤーの思い
第19回で紹介したように会津若松市は2019年4月22日、ICT企業の集積拠点となる「スマートシティAiCT(アイクト)」をオープンした。いわゆる「0から1」の第1ステージを完了した。第2ステージとなる今後は、AiCTに入居した大小さまざまな企業によるコラボレーションによって牽引される。世界に向けて新しい価値観を提案しようとするAiCTの入居企業は、どんな思いを持って会津若松のスマートシティプロジェクトに望もうとしているのだろうか。(文中敬称略)
中村 彰二朗(以下、中村) アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)のセンター長を務める中村 彰二朗です。本日はお集まりいただき、ありがとうございます。会津若松市のICT拠点となる「スマートシティAiCT(アイクト)」が2019年4月22日にオープンし、いわゆる「0から1」の第1ステージが完了しました。いよいよ「1 to 10」に続く第2ステージが始まりました。
第2ステージでは、AiCTに入居した企業やスタートアップ企業が地元企業とともに目標やビジョンを共有しながら化学変化を起こし“新たなエコシステム”を形成していく必要があります。今回は、そのキーパーソンになる方々とともに、エコシステムについて掘り下げたいと思います。
藤井 靖史 氏(以下、藤井) 会津大学 産学イノベーションセンター(UBIC)客員准教授の藤井です。会津大の産学連携を担当しています。会津に来て6年が経ちますが、大学での勤務のほかに、AiCTを運営するAiYUMUの取締役や内閣官房の「オープンデータ伝道師」、総務省の「地域情報化アドバイザー」などとして日本全国の地域行政や企業のIT活用を支援しています。
岡﨑 敏之 氏(以下、岡﨑) エヌ・エス・シー(NSC)代表取締役の岡﨑です。NSCは福島県と宮城県で21のモバイルショップを経営しています。当社は4キャリアすべてを扱っており、スマートフォンユーザーであれば皆、当社のお客様だと言えます。
私自身は東京から31年前に移住し、会津で通信事業会社を起こしたのち、NSCを立ち上げました。AiCTへの開所と同時にICT事業部を発足させたほか、AiCTの3階でコワーキングスペース「Share Works」を運営しています。
矢口 誠也 氏(以下、矢口) 電動キックボードなど電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP(ループ)」の事業推進統括を担当する矢口です。電動マイクロモビリティは、日本が直面している「ラストワンマイルの交通手段の欠如」という社会課題の解決に貢献できる手段だと考えています。私は山形県の出身で、幼少期から会津地域には頻繁に訪れてきました。
会津大では就職だけでなく起業するエンジニアが再び増えている
中村 ありがとうございます。藤井さんが務める会津大は「テクノロジースタートアップの“ゆりかご”ともいえる場所です。その中で藤井さんは、アカデミアの立場を軸にしつつ、ご自身も起業経験、経営経験があり、地域課題や行政についても理解されています。つまり、スマートシティ分野の“目利き”です。
岡﨑さんのモバイルショップは会津地域のスマートフォンの取り扱いでは最大シェアを持つなど、市民とデジタル機器の接点を創出されています。そして矢口さんはフィールドでの実証が必要なモビリティ関連企業の事業推進統括です。
そうした背景から、みなさんは会津若松市の取り組みに注目しておられることでしょう。そのうえで、会津地域の地方創生とスタートアップ企業の活躍は、どのように結びつくと考えますか。
藤井 私たちが取り組む産官学連携では「地域の企業とつないでほしい」という要望が強いです。AiCTがオープンして3カ月が経ちますが、入居企業の中にはすでに地域企業と共同的な取り組みを模索するなど、企業連携の具体的な動きが出てきています。
中村 会津大学は建学時から起業家を支援してきました。
藤井 当時は就職実績などがなかったため「卒業後は起業」という意識の学生が多数いました。その後は、就職を1つの目標に掲げ学ぶ学生が会津大でも多数派になりましたが、社会が急速にデジタル化している昨今は「テクノロジーを使って起業したい」という学生が増えてきています。
たとえば、VR(仮想現実)を使ったサービスや業務用コンテンツの開発などを手がけるAnost VRは、学生が在学中に立ち上げた会社です。同社は地域ニーズに応えるサービスを展開し社員数も増やしています。有望な1社です。
中村 起業する学生に共通点や傾向はありますか?
藤井 「社会への不安」や「未来の不透明感」が根底にあるようです。将来への不安を抱えながら会社員になるよりも、起業して自らの力でキャリアやビジネスを開拓する道を選びたい、「未来を創りたい」という学生が増えています。