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ローソンの竹増 貞信 社長 「店頭での触れ合いや暖かさこそが強み、デジタルでバックヤードを大改革する」

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年1月23日

−−今回、CEATECに初出展します。

 より良いサービスによって暮らしを幸せにすることを目指すものの、店舗も僕らの能力も飽和しつつあります。その突破口の1つがデジタルであり、テクノロジーです。デジタルを活用して店舗のあり方を変えていかなければ、商売が継続できなくなる可能性すらあると捉えています。

 同時に、デジタルのジレンマも感じています。デジタル化し機能が増えていくと、たとえば、Loppiのように高校生には使いやすいけれど、30代以上には使いにくいという声も出てきます。すると操作を簡単にするための機能がどんどん追加されていき、仕事を容易にするはずのデジタルがますます仕事を難しくさせていくという不思議な現象も起こっています。

 こうした点も同時に解消していくためには、ローソン単体で考えるよりも、さまざまなノウハウをお持ちの方の力をお借りしたいのです。デジタルの分野に先鋭的にチャレンジしてきたという自負はありますが、もっともっと変わりたい。

1万5000の店舗を実験場に

 CEATECでは今一度、裸になって「私達は、こういう店舗で、こんな商売をやっていきたいと考えています。みなさんは、どう思いますか」と問いかけたいのです。そして「それなら、こんな方法があるよ」とお知恵をおかりしたいのです。みなさんの力でローソンをデジタル先進企業に育て上げていただきたいという気持ちです。

 ローソンが持つ1万5000の店舗は、新しい店舗を生み出すための実験場になり得ます。地域別や一部店舗をパイロット店舗にして、お客さまの暮らしや購買シーンの効率や豊かさを高められれば、それを全国に展開していけます。笑顔があり、良いサービスを届け続けるためには、ここ2~3年にデジタルによって店舗をどう変えていくかが大きな勝負だと思っています。

 我々が最新のテクノロジーを開発するわけではありません。テクノロジーを持つ方に、ローソンの店舗を使って新しい取り組みを実現していただきたい。小さなことでもまず実行し、間違っていれば検証して仮説を立て直せば良いのです。それはCEATECに参加する我々自身のチャレンジにも言えることです。

−−業界の垣根を越えて共に考えるということですね。

 社内で良く話しているのは、お客さまを軸に考えることの大切さです。顧客にとってネガティブになることは絶対にしない。お客さまから「ローソンっていいよね」と言っていただけることが絶対条件です。その次がステークホルダーの皆さんと果実を分け合うことです。

 効率化を図って小売りだけにメリットがあるという仕組みでは先に進みません。たとえばRFID(ICタグ)を導入するにしても、メーカーにどんなメリットがあり、流通にはどんなメリットがあるのかを示せなければなりません。果実が得られなければローソンが応分の責任を負いますが、果実が得られるなら、それを分け合い、サプライチェーン全体としてお客さまの利便性を高めていく。そういうところにCEATECを通して向かっていきたいのです。

 デジタル化でローソンが得るメリットをサプライチェーン全体で享受し、その結果が必ずお客さまのメリットになる。こうした形で社会全体とつながっていくことこそが、お客さまと直に接している小売業の役割なのです。

竹増 貞信(たけます・さだのぶ)

ローソン代表取締役 社長。1969年大阪府生まれ。93年大阪大学経済学部卒業、三菱商事入社。畜産部、米Indiana Packers Corporation出向、広報部、社長業務秘書などを経て、2014年5月ローソン副社長に就任。16年6月から同社代表取締役 社長。高齢化社会、デジタル革命などの社会変化に対応した次世代コンビニの構築に着手し、さまざまな戦略を実行中。働き方改革や社員の健康推進などにも取り組む。